大工で元請けは力強く、あこがれられる存在だと思っていました。
でも実情はどうだったのかというと・・・
大工で独立した当初はほぼすべての業務を自分で行っていました。
敷地調査・見積・現場管理・現場施工・請求業務・会計処理・・・
正直いくら時間があっても足りません。
日中は現場仕事をしてへとへとになって帰り、そこから日付が変わるまで見積もり業務をしたり。
忙しいし大変だし責任重大だけど全然儲からない。
そう思っていました。
でも、もともと好きで始めたことなので仕事は楽しかったことを覚えています。
でも日々無力感を味わっていました。本当に良い家ってなんだろう。
自分が家を建てるとしたらどんな家がいいのだろう。
自問自答の日々だったのです。
ある日のこと・・・
高校の同級生の結婚式の二次会に参加したのですが、そこで高校の同級生と住宅の話になり、
住宅について熱く語り合いました。正直何をその時に話したのかはあまり覚えていません。
でもとにかくこの厳しい時代に好き好んで大工として自分は独立しています。
とにかく住宅建築にかけての情熱は誰にも負けない。
誰よりも住宅が好きだ。そんな根拠のない自信だけはありました。
それを感じ取ってくれたのか、
「住宅を建てるときは相談に乗ってよ。」
そう話してくれたのがうれしかったです。で、あとから分かったことなのですが・・・
その友人は一つのことをとことん調べて追及する性格だったので、かなりの「住宅マニア」だったのです。
悔しいのであまり言いたくないのですが、たぶん部分的に知識量では負けていたかもしれません。
「断熱にはこだわりたいんだよね」
最初は友人にそういわれても正直ピンときませんでした。
今でこそ省エネルギーが注目されているので常識となりつつありますが、
住宅の気密性と断熱性を高めて光熱費がなるべくかからないようにすること。
これは当時の私からしたら本当に大きな盲点でした。ここに気がつくことで家づくりが大きく進化し始めたのです。
初期費用が高い家は嫌がられるし、求められていない。高い家は提案してはいけない。
ただでさえ家は高いのだから少しでも安く提供したい。と変な思い込みがありました。
でも・・・
「ん?待てよ。断熱材でコストアップしてもそれ以上に光熱費が削減できればむしろお客様の負担は軽くなるな」
と気がつきました。
考えてみれば当たり前のことだけど大きな盲点でした。もともと自分でも家は長持ちさせないといけない。
長持ちしない家は安くても結果的に高くつく。と、長期的な視点で考えていたのにもかかわらずです。
思い込みとは怖いものです。